【パネラー】
家入 一真 氏(株式会社CAMPFIRE 代表取締役社長)
駒崎 弘樹 氏(認定NPO法人フローレンス 代表理事)
佐々木 健介 氏(NPO法人ETIC. ソーシャルイノベーション事業部 マネージャー)
【モデレータ】
日比谷尚武氏(コネクタ/株式会社フューチャーセッションズ Project30 エバンジェリスト)
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コレクティブ・インパクトを、次々と起こしていくために必要なことはなんなのでしょうか?
コレクティブ・インパクトを継続的に起こしていくことは、正直簡単なことではありません。でも、必要となる要素はあるはず。
本セッションは、この疑問について、あらゆる立場の方々が集まって意見を交わし、コレクティブ・インパクトの本質に迫りました。
日比谷氏
コレクティブインパクトを実現することにおいて、土台となる要素としてこの3つをあげてみました。
・弱いつながり
・志と相互事情の理解
・ディレクター(CCM)の存在
まず「弱いつながり」についてお伺いしたいと思います。この弱いつながりをつくるためのプラットフォームを、新公連さんやETICさんではやられていますよね。そこに関して何か感じられていることはありますか?
駒崎氏
例えば、文京区とフローレンスなどのNPOが組んだ「こども宅食」というコレクティブインパクトは、まさにこうした「弱いつながり」から生まれたものです。
文京区長は、日本で初めて育休を取った区長ということで、イクメン区長と呼ばれています。僕は、厚労省の「イクメンプロジェクト」というものに関わっていまして、そこにはイクメンコミュニティがあり、文京区長とはそこで知り合いました。
「こういうプロジェクトやろうよ!」「いいね!」というやり取りが、個人で区長とできる関係性を築けたんですね。ある程度、人となりや志がわかっていて、「一緒にやろう」と言える関係性がとても大事。セクターを超えた弱いつながりってとても貴重だなと思います。
日比谷氏
ありがとうございます。起業家とソーシャルセクターの距離がまだ遠いと言われているのですが、そのあたり家入さんはどう思いますか?
家入氏
僕は新公益連盟にも入らせていただいていて、全然違う文脈やセクターの方と交流するのが、とても楽しいんですよ。そのコミュニティにいるととても居心地がいいし、ビジネスの世界だと「一定の領域において知見を持っている」と言えますが、外の世界では「それでは全然ダメじゃん」ということに気付かされます。
僕自身学びたいので、新公益連盟さんには、「ぜひ入らせてください!」とメッセさせていただき入会しました。どんな人がどんな想いを持ってどんなことをやっているのか?それを、もっともっと知ることが必要だと思いました。自らセクターを超えて踏み込んでみると、そこには同世代で活躍されている方々がたくさんいた。
スタートアップのコミュニティで話す内容と、新公益連盟さんで話す内容を聞いていると、「これ近いこと話しているんじゃないか?」と思うんですよ。個別に話していると「お互いのコミュニティに興味ある」ということも話してくれるんです。でも、「ちょっとわからないから参加はできないなぁ」となってしまい、まだまだお互い断絶しているのが現状です。
例えば、イベントを共催するとか、もっと混じり合えばいいのにな、と思うことは多いですね。それが自分のやるべきことなのかもしれないと、使命感を感じることもあります。
駒崎氏
やりましょうよ!家入さんって本当に器用な方で、スタートアップでビジネスやりながら、リバ邸でソーシャルな活動もされていて、ハイブリッドな新世代の方じゃないですか。
家入さんみたいな人材がつないでいくと、より社会の課題解決になっていくと思うんです。社会の課題解決って、NPOの専売特許ではなくて、企業もできるわけです。それなら一緒にやっていきましょう!みたいなノリがとても大事だなと思いますね。
現状はまだまだセクショナリズムが強く、NPOはNPO、企業は企業、行政は行政みたいになっているので、そんなのなくして、共に活動することでエキサイティングなことになるんじゃないのかなと。
日比谷氏
次に大事になるのは、「志と相互事情の理解」というところ。要はお互いが「こういうことをしたいと思っている、でもこんな制限があってできないという課題がある。」それを相互に共有し合うことが大事になります。このあたりについて、佐々木さんにお話をお聞きしたいです。
佐々木氏
我々の活動の1つに、若者の就労問題に取り組んでいるNPOの支援があります。そこで出てきたのは、若者の就労問題を解決するには、NPOだけが動いて解決しようとするのではなくて、行政と企業も動かないと解決しないということです。
それぞれの視点で正しいと思っていることを、それぞれが言っているだけだと、グレーゾーンな方々をどうする?となった時に、共通理解が全然ないことに気がつきます。
NPOは「うちのソリューションならこういうことできますよ」と言い、行政は「うちはこれが問題だからどうにかしてくれ」と言う。それだと全然話が前へ進まないんですよ。まったく噛み合わない。
「なんとか良くしたい」という思いは一緒なのに、いい着地点を見出すのが難しいのが現状です。いきなり一足飛びに「これをやった方がいい」と、行くのではなくて、その前に「この課題がどうなっているんだっけ?」ということを共通理解するということが、結果としてスピードを上げることになります。
これがしっかり可視化されていると、どのセクターでも共通理解をすることができた上で、関わることができるんです。ただデータを見ることが重要ということではなく、構造を可視化して、それがどういう因果関係で起きているのか?とわかった上でデータを見ることが重要です。
日比谷氏
逆に言うと、そういう課題の事前分析がなく、やる気だけで進んでいることが多いということなんでしょうか?
佐々木氏
それぞれ見ているところがあって、それはそれで正しいんです。でも、全体を示していないことで、根本的課題へのアプローチにならず、対処療法になってしまうんですね。
日比谷氏
次々とコレクティブインパクトを起こすために必要なことってなんでしょうか?
駒崎氏
これはやっぱり事例が必要だと思います。
日比谷氏
事例ですか?
駒崎氏
「あ、できるんだ」と思うことが重要です。文京区の事例は、文京区的にはあり得ないことなんですが、やってみたらできてしまった。はじめは数百万円の予算も、何千万円と膨らんだんです。
こうやって事例をつくれば、全国から「うちでもやりたい!」という問い合わせが来るんです。「事例をつくる→発信する→外がやりたいとなる」このサイクルが大事かなと。
佐々木さん
まったくその通りですね。すでに事例があるものに関しては、事例を積み重ねていくということでしょうけど、ものによってはどうやればいいかわからない、というものもあると思います。
その場合は、次々と適切な対話を進めていくことが大切だなと思います。とりあえずキャンペーンを打つのもいいですが、その問題に関してクロスセクターで、どんな問題が起きているとか、それに対して自分たちはどこまでできていて、どこからやらないといけないのか、という対話のセッションを進めていき、それ自体をアウトプットすることが議論を進めていくということになります。
家入氏
お2人の話とてもわかります。僕は社内で「僕らのやるべきことは、モデルをつくっていくことなんだよ」と話します。テクノロジーの本質ってなんだろうって考えたときに、CAMPFIREでは“資金集めの民主化”という言葉を使っています。
BASE、CAMPFIRE、そういういろんなモデルをつくっていく中で見えたテクノロジーの本質は、「民主化」。本来、もしかしたら僕らの身近にあった物事がいつの間にか遠くにいってしまっていることがあるなと。それをテクノロジーの力を使って取り戻すことを、「民主化」だと思っています。
例えば、若い人が古民家を使って、CAFÉやゲストハウスにしたいというプロジェクトがすごく多いんですけど、じゃあ実際に金融でお金を借りられるかというと、借りられないわけです。じゃあバイトしてやるか?となるのは、尊いし否定する気もありませんが、インターネットがここまで普及したからこそできる資金集めがあるわけじゃないですか。それがクラウドファンディングです。
じゃあ民主化をどう本質的に捉えていくかと考えると、マクロに言うとクラウドファンディングってCAMPFIREだけでも50~60億円集めていて、年間で数億件のプロジェクトが立ち上がって動いているわけです。
それを数字で見るとみえないんですけど、ひとつひとつのプロジェクトを見てみると、お金を集めて個展をしたいとか、フリーペーパーやりたいとか、新商品つくりたいとか、全部小さな声なんですよ、小さな火なんですよ。
そういったひとつひとつの火が周囲に伝播して、「自分もできるかもしれないな」と思うようになるんです。僕らは「誰しもが声をあげられる世界をつくる」と掲げているんですけど、それはモデルを一個一個作っていくことなんだなと、お2人の話を聞いて思いました。
――以上、「日本でコレクティブ・インパクトを次々と起こしていくには?」のセッションをお届けしました。
どうすれば、人を巻き込める渦をつくることができるのか?それを考えることで、ひとつのヒントが見えてきそうだなと、感じています。
最後、家入さんが語った「ひとつの火が大切」という話。これは、コレクティブ・インパクトにおいてとても大事な考え方だと思うので、ぜひ念頭において取り組んでみてはいかがでしょうか?
文:長田涼